雨のち晴れ

自由帳

同性カップルの子育ては子どもに悪影響なのか

こんにちは。

同性婚訴訟が全国各地ではじまるようです。同性婚とセットで語られることが多い、同性カップルの子育てについて考えてみたいと思います。同性カップルの子育てについてあれこれ記事を探してたら、IRONNA『子どもの幸せを奪う同性カップル「里親」などもってのほかだ!』をみつけました。

 

 

この記事が書かれたのは2017年に大阪であった同性カップルが里親になったという出来事のあとです。内容はというと、アメリカにある大学の調査を2つ引用しながら、同性カップルが子育てすることが子どもに悪影響であるから同性カップルによる里親はするべきではない。また、結婚や社会制度を解体することに繋がりかねないなどの主張でした。2つの引用論文の内容は以下の通りです。

例えば、テキサス大学オースティン校のマーク・レグニラス准教授による18歳〜39歳の男女約3千人の調査だ。同性愛者の親に育てられた人は、結婚した男女の親に育てられた人に比べて、経済的、社会的、精神的問題を抱えている割合が高いことが分かった。

カトリック大のポール・サリンズ教授が発表した研究結果では、4歳〜17歳の同性カップルの子供は異性の親の子供に比べ、情緒・発達面で問題を抱える割合が2倍前後高いことが判明した(以上は森田清策・早川俊行編著『揺らぐ「結婚」による』)

 

引用:IRONNA『子どもの幸せを奪う同性カップル「里親」などもってのほかだ!』


ここで、疑問が。IRONNAが参考にしているアメリカの大学の調査は信頼性と妥当性が担保された論文からの引用なのかということです。僕が過去同性カップルが子育てをすることについてネガティブな内容の論文を見たことがなかったので徹底的に調べてみました。その結果、この2つの論文には重大な欠陥があることが分かりました。それを具体的に示します。

コロンビア大学ロースクールNathaniel Frank 博士が中心となって同性カップルの子育てに関する先行研究計77論文を調べました。コーネル大学のサイト『WHAT WE KNOW What does the scholarly research say about the well-being of children with gay or lesbian parents?』

whatweknow.inequality.cornell.edu

上記のサイトで77論文全て見られます。欠陥がない論文とある論文が分けられて掲示されています。(論文は全てで79本あるようです)

博士が調べた結果、73の論文において同性カップルが子育てをするについてネガティブな結果はありませんでした。異性カップルと変わらなく子育てができるということです。一方、同性カップルが子育てをすると悪影響があるとした4つの論文について、重大な欠陥があることがわかりました。以下に引用します。

A team I direct at Columbia Law School's What We Know Project has undertaken the largest review of same-sex parenting literature to date. We have identified 77 studies that address the well-being of children with gay or lesbian parents. Seventy-three of them find that such children face no disadvantages from having gay or lesbian parents. The studies used a wide range of methodologies, many relying on small sampling pools but some on nationally representative data. The aggregate result is an overwhelming scholarly consensus that having a gay parent causes no harm, one reason that every major professional organization that deals with child welfare opposes discriminating against LGBT families.

私(Nathaniel Frank博士)が指揮をしたコロンビア大学ロースクールのチーム「What We Know Project」は膨大な現在までにおける同性カップルによる子育てに関する文献の調査に着手しました。私たちは、ゲイやレズビアンの両親と共に暮らす子どもたちが健康で満足できる生活を送っているかに関する論文を77本確認しました。確認された77本の論文のうち73本の論文においてゲイやレズビアンを両親にもつ子どもは不利益な状態に直面していないことが分かりました。これらの研究は広範囲な方法論を使用しました。多くは小さなサンプルプールが用いられたり、一部が全体を代表するようなデータを使っているものもありました。総合的な結果、同性愛の子育てには害がないというのが学問的な統一見解であり、多数の専門機関が子どもの福祉に対処するためにLGBTファミリーへの差別に反対する理由の1つにもなっています。

引用:Los Angeles Times 「Why attacks on same-sex parenting depend on flawed research」11 04,2015

 

英語が苦手なもんで...なんとか翻訳してみました。つまり、77本の論文を確認して調べたら73本の論文は同性カップルが子育てをすることについてネガティブな結果は無かったということです。一方、論文の中には小さなサンプルデータしかないものや、外れ値を参考にしているものもありました。

 

As to the outlier studies, all share the same fatal flaw. At most a handful of the children who were studied were actually raised by same-sex parents; the rest came from families in which one parent was gay or had a same-sex encounter, families that had endured great stress and often split apart. So in the end, the outlier studies don't tell us anything about same-sex parenting; they just tell us what's long been known: Family stress and disruption are bad for kids, while stable ties are good for them.

外れ値の研究のような同一の致命的な欠陥がありました。これらの研究(同性カップルが子育てをすることを有害とした4論文)において、実際に同性カップルが子育てをしたのはせいぜい一握りの子どもたちでした。それ以外の子どもは、親の片方が同性愛者であったり、同性との出会いがあった家族で養育されていました。そして、家族は大きなストレスに耐え、しばしば引き裂かれることがありました。結局のところ、外れ値を研究したとしても同性カップルの子育てに関して何も知ることはできません。外れ値の研究で知ることができるのは、昔から知られている、家族のストレスや混乱は子どもに悪影響であり、安定した絆は子どもに良いということを私たちに教えてくれるだけです。

引用:Los Angeles Times 「Why attacks on same-sex parenting depend on flawed research」11 04,2015

 
このように、同性愛カップルが子育てをすることについて、有害であると結論付けた論文には外れ値を参考にしたり、同性愛カップルが子育てをしていなかったなど論文に瑕疵があることがわかりました。論文に信頼性と妥当性がなかったということになります。一番初めに挙げたIRONNAが引用している2つの論文はまさに外れ値などを参考にしていた欠陥がある論文に該当していました(コーネル大学のページでその論文を読むことができます)。

今回、Blogを書くにあたり様々な論文を当たりましたが、同性カップルが子育てをすることに関してネガティな内容は無かったです。同性カップルが子育てをしても異性愛カップルと同様に子どもはすくすくと育つわけです。学術の分野からこのような結論がでた以上、同性カップルが子育てをするのは反対か否かという議論はやめるべきです。また、日本においてもすでに同性カップルが子育てをしています。そういう事実に目を向けるべきです。

最後に1つ。

「同性愛カップルに育てられる子どもはかわいそう」という言葉、差別と偏見に満ちています。当事者はかわいそうではないはずです。当事者をそのような目で見る人が自分の中にある差別と偏見を自覚するべきではないでしょうか。

英訳も間違いがあると思います。

つたない文章を読んでくださりありがとうございます。