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憲法24条は同性婚を「禁止」してるのか...てきとうに考えてみた 

こんにちは!

憲法24条が同性婚を「禁止」しているのかどうなのか考えてみます。

はじめに憲法24条1項のGHQ草案と日本国憲法を書いておきます。

日本国憲法24条GHQ草案>
Marriage shall rest upon the indisputable legal and social equality of both sexes, founded upon mutual consent instead of parental coercion, and maintained through cooperation instead of male domination. 

婚姻は、両性の社会的平等また明確な法の上になされるもので、両親に強制されることなく相互の同意の上に成り立つものであり、男性優位ではなく互いの協力により維持される。


日本国憲法24条>
Marriage shall be based only on the mutual consent of both sexes and it shall be maintained through mutual cooperation with the equal rights of husband and wife as a basis.


婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。


<両性の合意>

民法(明治民法)において婚姻は家と家の契約でした。また、旧民法750条は「家族カ婚姻又ハ養子縁組ヲ為スニハ戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス」と定め、婚姻や養子縁組について戸主や両親の同意を要求しました。そのため、女性の両親や相手方男性とが一方的に話し合いを進め婚姻を決めるなどの事例もありました。

GHQは男女平等や女性の権利尊重を具体化するような新憲法の作成に着手しました。

そして出来上がった条文が日本国憲法24条GHQ草案です。この条文をみると、婚姻と女性を「両親からの強制」と「男性優位」から解放するために作成されたことが分かると思います。一般的にいう、家制度の解体と男女平等です。男女平等に重きを置いたというよりも、女性の権利尊重を強調した条文と理解することができるかもしれません。

GHQ草案では条文が長かったため、日本国憲法を作成するときに草案の条文が書き換えられ現在の憲法24条になりました。

憲法24条1項の最高裁の考え方>

2015年12月26日最高裁判所大法廷で夫婦別姓訴訟の判決がありました。その判決文の中で最高裁憲法24条1項について以下のように述べています。

また、同条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と規定しており、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される。

最判平成25・12・16民集第67巻9号1761頁
(下線は筆者によるもの)

憲法24条の婚姻は「当事者間の自由かつ平等な意思決定」の上に成り立つものであると最高裁は判示したわけです。とても重要な文言だと思います。婚姻が「当事者間の自由かつ平等な意思決定」の上に成り立つとするのなら、同性婚についても同様のことが言えるのではないでしょうか。次はそれについて考えて見ます。

同性カップルを保護しないが、同性婚は禁じていない>

憲法学において、同性婚には憲法24条が規定する男女平等や女性の権利尊重などの保護は及ばないと考えるのが一般的です。憲法24条は男女平等、女性の権利尊重を保護するものであるので、そのまま同性カップルに適用できないという解釈になるわけです。当たり前っちゃ当たり前な理屈ですね。そこに異論はありません。

しかし、さきほどの最高裁判例をみるに婚姻が「当事者間の自由かつ平等な意思決定」により成立する、という理屈は異性カップルではなく同性カップルにも援用できるのではないでしょうか。

シンプルに言えば、憲法24条が規定する保護は同性カップルには及ばない。しかし、保護が及ばないだけであって憲法24条が同性婚を禁止しているとまではいえない。

憲法24条は異性婚についての規定です。よって、同性婚憲法24条の問題というよりも憲法13条「幸福追求権」や憲法14条「法の下の平等」に関わる問題なのではないでしょうか。

<まとめ>

憲法24条がいう婚姻とは異性婚をする際についての規定であり、同性婚にそのまま適用することはできません。しかし、GHQ草案の立案過程や現憲法条文、最高裁判例などを参照すると憲法24条が同性婚を禁止しているとは解することはできず、同性カップルに婚姻の法的効果を与えることは憲法24条と矛盾するものではないでしょう。むしろ、同性婚憲法13条や14条から積極的に認められるべきものと考えられます。


<加筆>
大切なことを書き忘れていました。

平成30年の常会で立憲の逢坂誠二衆議院議員が「日本国憲法下での同性婚に関する質問主意書」を内閣に提出しました。いくつかの質問のうち1つを取り上げます。一部抜粋です。

「現在、同性婚日本国憲法第24条第1項に反し、違憲であると考えているのか。政府の見解如何。」

この質問に対する内閣の回答は以下です。

憲法第24条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると規定しており、当事者双方の性別が同一である婚姻(以下「同性婚」という)の成立を認めることは想定されていない。」

内閣の回答はある意味当然のことだと思います。憲法24条は異性婚を保護するための規定ですから、その保護が同性カップルに適用することは想定されていないです。しかし、答弁を読めばわかる通り憲法24条第1項が同性婚を禁止しているとは言っていません。あくまで、異性婚の保護を規定した条文にすぎないということです。

こういった内閣の答弁は過去何回か行われてきましたが、答弁内容は変わらずです。


(参考文献)
『Constitution of Japan』資料番号;Alfred Hussey Papers; Constitution File No. 1, Doc. No. 12
重村博美(2015)『家族のあり方をめぐる法と裁判の交錯』,近畿大学短大論集,第48巻第1号,p.23〜42
青山薫(2016)『「愛こそすべて」–同性婚/パートナーシップ制度と「善き市民」の拡大–』,ジェンダー史学,第12巻,p19〜36
清水雄大同性婚反対論への反駁の試み––「戦略的同性婚要求」の立場から』
長谷部恭男(1996)『憲法(新法学ライブラリ)』新世社
第196回国会 257 『日本国憲法下での同性婚に関する質問主意書』, http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/196257.htm